「冷え」は多くの妊婦さんが感じるお悩みですが、実は冷えとお産の進み方には関係があることが、日本の研究で示されています。ここでは文献の要点をやさしくまとめ、今日からできる冷え対策(温活)もご紹介します。
研究でわかっていること
出産後の女性2,810名を対象にした研究(中村幸代・堀内成子, 2013年 日本助産学会誌)では、冷え症と、代表的な5つの異常分娩(早産・前期破水・微弱陣痛・遷延分娩・弛緩出血)との関連が分析されました。その結果、冷え症はこれら5つすべてに対して統計的に意味のある「正の影響」を持つことが示されています(いずれも p<0.001)。
- 早産・前期破水・微弱陣痛・遷延分娩・弛緩出血のいずれとも関連
- 関連の大きさ(パス係数)は微弱陣痛が最も高く、次いで弛緩出血・遷延分娩・前期破水・早産の順
さらに関連する報告では、冷え症のある妊婦さんは早産の割合が約3.4倍、前期破水が約1.7倍高かったとされています。また、妊娠中の環境温度が「暑すぎても寒すぎても」早産が増えるという研究(2023年)もあり、体の冷えや温度環境とお産は無関係ではないと考えられています。
妊娠中に冷えやすい、4つの理由
妊娠中の「冷え」は、体質だけの問題ではありません。理学療法士の視点で見ると、この時期ならではの体の変化がいくつも重なって起こっています。主な4つの理由を、やさしくお伝えします。
① ストレスと自律神経の乱れ(ストレスホルモン)
つわりや、日ごとに変わっていく体への戸惑いなど、妊娠中は心にも体にも負担がかかりやすい時期。強いストレスを感じると交感神経が優位になり、アドレナリンやコルチゾールといったストレスホルモンが分泌されます。これらには血管を収縮させるはたらきがあるため、手足の血流が減って冷えやすくなります。「がんばりすぎない」「まわりに頼る」ことも、立派な温活。心をゆるめてあげることが、めぐりのよい体への第一歩です。
② お腹を支えることで起こる「姿勢の変化」
お腹が大きくなると重心が前へ移り、腰を反らせてお腹を支える姿勢になりがちです。すると骨盤まわりや股関節の動きがかたくなり、下半身へ向かう血流がせき止められて、足元が冷えやすくなります。姿勢と冷えは、じつはつながっています。ここは、体を整えるケアで変えていける部分です。
③ 動く機会が減ることによる「筋力の低下」
体調に波のある妊娠中は、どうしても動く機会が減りがち。筋肉は動くことで熱を生み、とくにふくらはぎは「第二の心臓」として血液を上へ送り返すポンプの役目をしています。この働きが弱まると、冷えが進みます。無理な運動は必要ありません。ふくらはぎがひんやりしていたら、まずは温めて、軽く動かすことから始めましょう。
④ 上半身のほてりと、上下の「温度差」
妊娠中はホルモンの影響で上半身がほてり、「暑い」と感じやすくなります。ところが、お腹や足先に触れるとひんやり…という方は少なくありません。上半身は熱いのに下半身は冷たい――この温度差こそ、冷えが進んでいるサインです。エアコンの効いた場所でも、お腹と足元だけはしっかり温めて、「頭寒足熱」を意識してみてください。
なぜ「冷え」がお産に関わるの?
くわしいしくみはまだ研究の途上ですが、体が冷えると手足だけでなく子宮や骨盤内の血流も滞りやすく、子宮の筋肉の働き(陣痛)や赤ちゃんをとりまく環境に影響するのでは、と考えられています。冷えは自律神経の乱れとも関わります。
※ これらは「関連・傾向」を示すもので、冷えが必ず異常分娩につながるわけではありません。効果や影響には個人差があります。体調や気になる症状は、必ず主治医・助産師にご相談ください。
今日からできる冷え対策(温活・冷えとり)
冷えとりの基本は 「頭寒足熱(ずかんそくねつ)」。上半身は涼しく、足元をしっかり温めて、体の上下の温度差を小さくするのがポイントです。冷えとり健康法の考え方を参考に、妊娠中でも取り入れやすい方法をまとめました。
- 頭寒足熱を意識する:上半身は薄着ぎみに、下半身(とくに足元)はしっかり温めて、上下の温度差を減らします
- 絹+天然繊維の靴下を重ね履き:絹(シルク)→ウール(綿)→絹…と数枚重ねると、空気の層で保温され、足元が冷えにくくなります
- ぬるめの半身浴:37〜38℃のお湯に、みぞおちから下だけ20〜30分ゆっくり。上半身が冷えないよう肩にタオルを(妊娠中はのぼせ・立ちくらみに注意し、無理のない範囲で)
- レッグウォーマー・腹巻・湯たんぽ:足首・お腹を直接温めて、冷えをためない
- 仙骨(お尻の中央)を温める:腰の下・お尻の割れ目の上あたりにある平らな骨。この付近には自律神経(骨盤内の神経)が集まり、温めると副交感神経がはたらいて体がゆるみ、血管が広がって下半身のめぐりが整いやすくなります。使い捨てカイロ(衣類の上から・低温やけどに注意)や湯たんぽ、蒸しタオルでじんわりと
- 締めつけない・温かい飲み物:ゆったりした服装で、冷たい飲み物は控えめに。白湯や温かいものを
- 足首・ふくらはぎを動かす:かかとの上げ下げ、足首回し、無理のないウォーキングでめぐりアップ
※ 妊娠中は、長湯・熱すぎるお湯・のぼせに注意し、無理のない範囲で行ってください。体調に不安があるときは主治医・助産師にご相談を。
SORAのマタニティケア
足やお腹の冷えは、骨盤・肋骨まわりのこわばりや姿勢とも関係します。SORAのマタニティケアでは、理学療法士が骨盤・背中・お腹まわりをやさしく整え、呼吸がしやすく、めぐりのよい状態づくりをサポート。おうちで続けられる温活・セルフケアもお伝えします。
参考文献
- 中村幸代・堀内成子(2013)妊婦の冷え症と異常分娩との関係性. 日本助産学会誌 27(1), 94-99. https://doi.org/10.3418/jjam.27.94
- 中村幸代ほか. 妊婦の冷え症と微弱陣痛・遷延分娩との因果効果の推定. 日本看護科学会誌. J-STAGE
- 東京医科歯科大学 プレスリリース(2023)「暑すぎても寒すぎても赤ちゃんが早く産まれる」. https://www.tmd.ac.jp/press-release/20231129-1/
SORA